大切にしたいお客さんのことは、心をこめて“友人”と呼びたい。
信頼し、高めあうことで、いいものがうまれると信じたいから。
次は、どの“山”を目指して歩こう。どんな景色を、一緒に見よう。
はじめっから「最高のサイトよろしくっす」「ブランディング、おまかせします」「ウエーィ、ウェーイ」、なんて関係性はない。いや、世の中必死に探せばあるのかもしれないが、もしあったとしたら、それはちょっとした奇跡だ。カネックス刃物工業からモンブランへの最初の問い合わせは、2021年。それから2年間の熟成期間を経て、プロジェクトがスタートしたのは2023年。さいしょのヒアリングから一歩、一歩、というよりも、すり足でじりじりと近づきながら、タグライン提案、ロゴ提案、動画撮影と、段階をふんで関係性を築き上げてきた。古い機械や道具をだいじにしている町工場の美しい現場、すれちがうたびに交わされるノンバーバルあいさつ、不器用だけど実直なものづくりの姿勢。それを受け取ったクリエイティブチームそれぞれが、純粋に「この人たちを応援したい」という、おなじ気持ちで突っ走ってきた。なにかをチームでつくりあげることに、どんだけ「おなじ気持ち」がだいじかって、あらためて気付くことができた。今だったらいえるかな。最高の仕事をごいっしょできてよかった、これからもよろしくお願いします。ウエーィ、ウェーイ!
Team Member
- ディレクター
- 竹田京司(モンブラン)
- プランナー・エディター・コピーライター
- 山内陽子
- グラフィックデザイナー
- 杉村武則(OVAL)
- フォトグラファー(現場)・ビデオグラファー
- 穴見春樹
- フォトグラファー(製品)
- 山口亜希子(Y-studio)
- ウェブデザイン
- モンブラン
- コーディング
- 松高泰市
Client
カネックス刃物工業株式会社
代表取締役社長
杉 隆輔さん
Sugi
Ryusuke
カネックス刃物工業の杉さんと、プライベートサウナへ。
chapter. 01
01変える、のではなく、
じっくりと育てていく。
- 聞き手/山内陽子
- 撮影/橋本大
竹田
杉さんから問い合わせいただいたのって、確か2021年でしたよね。
杉さん
ああ、はいはい。いちばん最初ですね。あの頃は、まだ社長でなくて、社長交代の前だったですね。社長交代の話が出るまえのことで、単純にホームページが古くなってたから新しく更新したい、と思って問い合わせしました。
竹田
社長交代前のはなしだったですね。
杉さん
問い合わせた3年前は、決まってなかったんですよ。そのすぐ後に、1年後に社長交代をするとか、そんな話が出てきて。だったら、社長交代してからの方が、いろいろ変えるにはタイミングがいいかな、と。それで実際に動き出したのが、2年後、という。
01変える、のではなく、
じっくりと育てていく。
いまは、杉さんが社長で、弟さんが副社長ですよね。社長交代のときって、「おまえが次社長だから」と言い渡されていた感じだったんですか。
杉さん
弟は社長になる気がなかったんですよ。ということで、私が代表取締役社長になりました。ただ、社長一人で動かしているわけではないので、今回リニューアルしたホームページでは、よくある社長一人であいさつする、というような形じゃなくて、副社長の弟とふたりの写真を撮ってもらって。
竹田
そうですね。イメージ的にふたりで会社を動かしているイメージが、なんとなく良くて提案しました。
杉さん
それ、よくわかりますし、それがすごくよかった。ホームページできて周りから結構言われたんですよ。よくある「私が社長です」的なものでなく、新しい感じがした、という声が多かったですね。
さいしょの問い合わせって、3年前だったんですね。
なぜモンブランに問い合わせしたんですか。
杉さん
いろんなホームページを見て探したんですよ。そのときにモンブランさんの過去の実績を見つけて、好きなデザインがすごくあったんです。もともとアートが好きで、ホームページを新しくするならデザイン性の高いところに頼みたいなと思ってたので連絡したんですよ。
竹田
さいしょの問い合わせから2年後に、第一回目の打ち合わせにグラフィック担当の杉村くんと、山内さんの3人で伺ったんですよね。
山内
そのときに工場内を案内してもらったのが、今回のブランディングのすべて、と言っていいくらい。現場の美しさとか、働いている方たちの姿勢とか、杉さんの社員に対する思いとか。
竹田
ロゴも大文字から小文字に変えたり、刃物を扱う会社なのに、なにかやわらかいものを取り入れたり。大きい変化もあったのですが、つくっていくものが、ガチッとはまっていく感じがありましたね。
杉さん
ホームページのデザインを最初に見たときも「あーこれこれ!」と! 早い段階で自分の好みを理解してもらったのもよかったし、言葉もさいしょは「え?」と思ったのですが、あとからじわじわと、しっくりくるようになりました。全体を通して、こういう宣言なんだ、と。
山内
ですよね。さいしょの提案のときに、杉さんが「え?」という顔をされたことを覚えています。ご提案したタグラインは、さいしょの現場見学で感じた「ものづくりってかっこいい」をどうしても伝えたいと、ちょっと熱くなりました(笑)
カネックス刃物工業の杉さんと、プライベートサウナへ。
chapter. 02
02ブランディングは、
働く社員が主役。
動画ができあがったタイミングで、社員全員の前で上映会をしたんですよ。
杉さん
もともと、働いている人たちを主役にしてほしいということを伝えていたじゃないですか。それが、あの動画を見て、すごい表現されていた。みんな喜んでいましたよ。
竹田
動画を全員で集まってみたんですか。 僕は、その様子を見たかったなぁ。それ、ほんとうれしいですよ。これからのカネックスは、どうなっていきたいですか。どうなっていくと思いますか。
杉さん
会社の主役は、働く人たち、ひとりひとりなんですよね。製品をつくる人がいて、製品がある。そのために、みんなが働きやすい環境を整えるのが、私の仕事ですから。そのうえで、私のやりたいこと、会社がめざす方向をみんなが理解してくれて、仲間が増えていけばいいかと思ってます。
今回のブランドを再構築してきた作業って、どのように役立つと思われますか。
杉さん
今回のホームページは、見ての通り働く人がメインですよね。ものづくりは、一見地味な作業なのですが、それを表に出して、誇りを持って働くことができる現場だと感じてもらえるのではないかと。働く人にとってモチベーションになれたら、と。
大学の研究開発協力だったり、
社内の働き方改革だったり、作業の見える化だったり。
いろいろな取り組みもされていますよね。あ、コマ大会も!
杉さん
どこを経由して、自社を知ってもらうかわからないじゃないですか。2022年からエントリーしているコマ大戦は、社員が自主的にやっていることで、年を追う毎に熱を帯びている。自主的に動ける環境をつくるのが、大事なんだなと実感してます。与えられた仕事だけじゃなくて。
山内
はじめの打ち合わせで聞いた「スキルマップ」の取り組みに、ちょっと感動したんです。スキルの見える化を、自己評価で採点して。できることが増えたら、社員同士で助け合って、働き方改革にもなる。すごくいい取り組みだと思いました。
竹田
あれ、めちゃくちゃいいですよね。真似したいくらい。とてもわかりやすくて。
杉さん
製造工程を細かにわけて、それぞれの作業ができるか、どの程度できるかを自己評価するシステムですね。この自己評価がポイントで、「できる」ことを自己評価すると自分に厳しくなる。よっぽど自信がないと満点をつけづらいからですね。スキルマップを導入してから、ヘルプの体制ができるから休みやすくなるし、結果的に納期が安定する。納期遅れゼロを実現できているから、会社への信頼も上がります。
それと、工場内にでっかいモニターがあったじゃないですか。えっと…
杉さん
生産管理システムですね。モニターを見れば、現在どれくらいの製品の製造が動いているか目で確認できるから、早めに終わったら休もうよ、早めに帰ろうよ、となる。モチベーションアップにも貢献してますね。仕事が効率的に動けば、工場内の電気代とかコスト削減にもつながるんですよ。
竹田
いやぁ、ここまで社内の意識改革をするのって大変だったろうなぁ。よくポキッと折れずに進みましたね。
杉さん
ここまでになるまで、5、6年かかりました。時間はかかるし、手をつけはじめた当初は反感がすごかったけど、やるからには結果を出す、という勢いで。
山内
ブランドの背景には働く人への思いや、現場を変えようと奔走する人の姿がある。ブランディングに取り組む際には、その見せていない背景まで含めて伝えることがだいじかって、実感しました。