大切にしたいお客さんのことは、心をこめて“友人”と呼びたい。
信頼し、高めあうことで、いいものがうまれると信じたいから。
次は、どの“山”を目指して歩こう。どんな景色を、一緒に見よう。
はじまりは、ロゴの刷新。OVAL杉村武則くんによって熟考された、シンプルで力強く、美しい「M」のロゴが、チームの心をひとつにした。「会社はお客さんによって育てられる」 ―なんて言葉があるけれど。2019年からはじまった数々のプロジェクトは、まさにそんな感じ。松下組とモンブランは、クライアントと制作会社にとどまらない関係性を、長い時間をかけて、丁寧につくりあげてきた。スローガン「WORK IN LIFE」をテーマにしたコーポレートサイト、リクルートMV制作、オリジナル商品開発、周年事業からMVV策定に至るまで。松下組本体にとどまらず、グループ会社のあらゆるクリエイティブを、ともに生み出しつづけている。実は代表の松下さんは、トゥー・シャイ・シャイ・ボーイな一面もある。それがいまではお互いほろ酔いで、肩を組みながら、歌なんて歌ってる! そんな時間こそが、「人生の一部である仕事=WORK IN LIFE」のなかにある、一瞬のきらめきみたいなものなんじゃない? そして僕らはそんな時間が大好きだ!
Team Member
- ディレクター
- 竹田京司(モンブラン)
- プランナー・エディター・コピーライター
- 福永あずさ
- グラフィックデザイナー
- 杉村武則(OVAL)
- フォトグラファー・ビデオグラファー
- 穴見春樹
- ウェブデザイン
- モンブラン
- ウェブイラスト
- アプアロット
- コーディング
- 松髙 泰市
Client
松下組 代表
松下 義一さん
Matsushita
Yoshikazu
松下組の松下さんと、温泉宿へ。
chapter. 01
01はじまりは、たった4本の線から。
チームの灯台となった「ロゴ」のはなし。
- 聞き手/福永あずさ
- 撮影/山口亜希子
松下さん
もともと、従来のウェブサイトをつくり直したいってところからの依頼で。いろいろと会社を検索するなかで、モンブランさんの制作事例にいくつもビビッとくるものがあった。問い合わせをしたら、すぐに「お話聞きに行きますね!」って竹田さんが本社まで来てくれて。実はロゴを変えるのは段階的でいいかなと思ってたんですが、「サイトと同時進行で一進めたほうがいいです」って言ってくれて。
竹田
それまでのウェブサイトって、松下さんがご自分でつくられていた。それが、意外とかっこいい感じのものだったんですよ(笑)。だから、これはまず杉村くんに入ってもらおうと思って。何となく世界観が合いそうだなと思いました。
01はじまりは、たった4本の線から。
チームの灯台となった「ロゴ」のはなし。
杉村くんとモンブランの本格的なプロジェクトって、
これが初めてだったんじゃないですかね。
杉村
もうこれ何回も話すんですけど、ロゴの提案のとき、会議室の空気がほんとガラッと変わったんですよね。「ちょっと妻を呼んできます!」って松下さんがおっしゃって、駆け出していった(笑)。そして決定した案は、最後の最後に作成した案でした。それまでつくっていた案も気にいってたんですが、自分のなかで、もうひとつ決め手にかけていたというか。それで提案の直前、専門学校での授業中にパッとひらめいたものを、ガッとラフにおこして、竹田さんに見せたら「これでいこう!」となりました。
松下さん
松下組にしか使えないオリジナリティと、これまで自分たちが受け継いできた想いとストーリーを大事にしてくれた案だというのが一発でわかりました。実は最近、うちの町の町長と2人で話す機会があったんですよ。もう80歳近い方なんですが、「松下組のロゴいいよね!」って言ってくれて。これはめちゃくちゃうれしかったですね。
杉村
うれしい〜。たった“線4本”なのに、ちゃんと松下組のアイデンティティにたどり着けたのがうれしいんですよね!
竹田
クリエイティブって、完成したあとはお客さんに委ねる部分も大きいんですが、松下さんはロゴしかり、ほかの制作物しかり、丁寧に使って育ててくださっているのが伝わります。
杉村
わかります。あの最初の「惚れた!」って気持ちが、ずっと愛情としてのこっている気がしますよね。
さて、ウェブサイトですが。これも本当に「建設業らしからぬ」というか、
いわゆる“硬い”建設業のイメージを大きく刷新するものになったと思います。
手前味噌ですが、かなり話題になったんじゃないかと。
松下さん
もう本当に、リリースしてからはどこに行っても「松下組さんのサイトいいですよね」「どこがつくってるんですか?」ってかならず聞かれます。それにちょっと慣れちゃったくらいです(笑)。初見の打ち合わせに竹田さんと福永さんがきてくれて、いろんな話をしましたね。それをもとに、「WORK IN LIFE」という、会社の理念に近い新しいことばを言語化できたことが大きかった。これは傑作コピーだったと思っています。
2019年頃って、世間的にはまだ「ワーク・ライフ・バランス」全盛期だったと思うんです。
働くことと、生活することのバランスをとるっていう。でも松下さんは、わりと最初から
「働くことは生活の一部。仕事が、人生に溶け込んでいることが理想」と明確におっしゃってました。
それって「WORK IN LIFE」だなあと思ったんです。同時に、ウェブサイトのコンセプトとして提示した
コミュニケーションキーワードが、「5年後、何してる?」でした。
竹田
僕らの仕事は、「3年後、5年後にどうなってたいか」ってことを聞くことが多いです。ありたい姿、というか。だから、最初はちょっと実現できないかも…くらいの夢でいいんで聞かせてくださいと伝える。そうすると、3年後くらいに、ウェブサイトで描いた未来に追いつきはじめるので。
松下さん
あの時描いた「5年後」がまさに今年、2024年です。いや〜早い…。そういう道のりを、ウェブサイトの特設サイトで表現した「人生ゲーム」。これも秀逸な提案だったと思います。
松下組の松下さんと、温泉宿へ。
chapter. 02
02アイデンティティを貫いて。
つくることを楽しんだら、
次の目的地が見えた。
そしていままさに、次の「5年後」を描く準備がはじまったところですね!
フォトグラファーの穴見くんも、最初からチームとして関わってもらっています。
「松下ホーム」の「SLOWLY O‘CLOCK」イメージ動画を撮ったり、
最近では、リクルート用のMVも監督・撮影してくれました。
穴見
実は僕も、最初はこのロゴに引っ張ってもらったところが大きくて。
演出めいたものより、“リアル”をおさめるだけで全然いいなって。とにかく現場の職人さんたちがめちゃくちゃカッコよかったんで、その人たちの一番カッコいいって思える瞬間を撮ろうって思った感じです。
竹田
建設業でMVつくってるもんね(笑)。
穴見
そう(笑)。映像を見やすく・わかりやすくするのは簡単だけど、松下組さんって、たくさんの社員を一気に採用するような大手企業とはちょっと違うじゃないですか。
松下さん
そうですね。
穴見
だからですね、100人に届けようとせず、「ずっとつづく1人」の心のまんなかに刺さるものをつくりましょうって言いました。
その「ずっとつづく」に関しては、偶然にも新たに設定したミッションにつながる言葉ですね。
あらためて、個々のメンバーが似たような気持ちでプロジェクトに取り組んでいるのがわかります。
竹田さん、モンブランの“チームクリエイト力”についてちょっとお聞きしていいですか。
モンブランはプロジェクトごとにチームメンバーが変わりますが、松下組さんみたいにブランディングに関わる場合は、だいたい同じチームでクリエイティブをつくりあげてますよね。
竹田
そうですね。ただ「絶対このメンバーでやりたい!」って最初から固執しているわけではなくて。みんなプロなんで。それぞれが最大限の力を発揮してくれて、気づいたら喜ばれるもの・長く愛されるものになっていっているというイメージが近いですかね。
5年もやってると、ある意味家族みたいになってきました。
そして、松下さんはクリエイターへのリスペクトがすごい!(笑)
これってめちゃくちゃありがたいことです。
松下さん
信頼とか実績って、一個一個積み重ねていくのに時間がかかるものじゃないですか。やっぱり、人と人が一緒につくるものなので。僕はモンブランさんとのプロジェクトをとおして、どれだけプロを信頼するかが大事だと実感しました。
竹田
ありがとうございます。松下組さんの仕事は全部ストレートで、シンプルで、堂々としていることが特徴かなって思いますね。あと僕らは松下さんとの仕事の前までは、いわゆる「賞レース」とは無縁で。「これで賞を獲りたい」とか、そういう気持ちと無縁なままずっと走りつづけてきたチームで。そしたらK―ADC(九州アートディレクターズクラブ)のアワードにウェブ部門があるってことで、試しに出してみるかってなったら、結果的にウェブは大賞、ロゴでベスト9賞をいただくことができた。これは、相当うれしかった! 何より、松下さんに喜んでいただけたことがうれしかったんです。
松下さん
僕もあんまり感情をオモテに出すほうではないけど、実はすっっっごくうれしかったんですよね。竹田さんとか、杉村さんとかみなさんがうれしそうなのが、うれしかった。一緒ですね(笑)。
一緒ですね(笑)。そこから、最新の仕事になるMVV策定に入ります。
これも、1年くらいの時間をかけてつくりあげました。
あとはいま、会社オリジナルの「野帳」の作成もすすめていますね。
松下さん
そもそも会社が70年続いているのに、社是とか社訓とか、何もなかったんですよ。これを機に会社の「軸」をつくろうと。何のために会社が存在しているのかってところまで、改めて見直そうと思って。ただどうしても僕らだけでやっちゃうと硬くなっちゃうので、これは福永さんにお願いしたいと思いました。
竹田
僕らはよく「太陽」をつくるというような言い方をしますが、そういうみんなが目指していく言葉から、クリエイティブの方向性を探っていくことが多いんですね。
そこで、「小学校で学んだことをちゃんとできる人がかっこいいんだよ」
っていう軸を立てました。それからミッション・ビジョン・バリューが生まれるんですが、
これも、「こうあるべき」という枠にとらわれない、自由な表現のものになりました。
松下さん
そうですね。社員のみんなには、「人の気持ちがわかる人でいてほしい」という、いたってシンプルな願いを伝えたかった。僕は「松下組で働く人にずっとしあわせでいてほしい」という思いが一番にあって、これがまた、「WORK IN LIFE」の延長線にあるものだなって思っています。
杉村
僕にとってこの仕事って、「これでOVALを知ってもらえた」って感触がデカくて。実際のところ、「賞に好かれるロゴ」ってあると思うんです。ちょっと変な言い方ですけど「このロゴでは獲れない」と思ってた。でも松下組さんの場合は、「自分がつくりたいロゴの世界」で評価されたというのが、めちゃくちゃ響いたんです。
松下さん
実際そのロゴを冠したユニフォームを着た社員が、地域のために汗を流していますね。それを見て、ああ建設業ってカッコいい仕事だと、子どもたちに思ってもらえる会社でありたい。やっぱりそこですね。
あ、思い出した。提案のとき杉村さんが、「100年経っても愛されるロゴをつくりました」っておっしゃってたんですよ! あれは、もうなんか…さすがだなあと思いましたね。
杉村
いやあ、そんなことを言えるのは、
一青窈か僕くらいですね!